飯島夏樹さんのこと

 先日、テレビで飯島夏樹さんという肝臓ガンになったあるプロウインドサーファーのドキュメンタリーをやっていた。2月頃だったと記憶している。
 彼は一流のプロウインドサーファーでワールドカップに出場し続け、国内の大会では何回も優勝している。かわいい奥さんと4人の子宝に恵まれ、人生順風満帆であったが突如、肝細胞ガンの宣告を受ける。2002年5月の事である。
 そして、医者から肝臓の移植不適合と診断され、うつ病とパニック障害を引き起こすが、奥さんの懸命の励ましによりうつ病とパニック障害は克服するも肝臓ガンは悪化し、2004年5月にあと3ケ月の余命宣告を受けるのである。
しかし、彼はガンの終末期患者でありながら、自分の闘病記をネット連載「今日も生かされています。」で2004年8月16日から2005年2月19日まで発表し続け、多くの人々の心を打ち、それが評判になってフジテレビでドキュメンタリー番組まで組まれた。
彼のエッセイ「ガンに生かされて」ではガンのターミナル(終末期患者)としてその壮絶な闘病生活が記されているのだが、それは死を目の前にした悲壮な感じではなく、大変ユーモアとウイットに富んだ語り口なのである。これは病んだ飯島さんというものを客観的に見て、観察しているもう一人の飯島さんがそこに居るような感じである。
 そのエッセイの中で彼は告白しているのだが、以前の自分は大変、身勝手で利己主義な男で自分の事しか考えていなかったが、今は本当に素晴らしい家族に囲まれて幸せな自分であると言うのである。そして、ガンのターミナルになった今、つくづく自分は自分で生きているのではなく、生かされていたのだという事が分かったとも言っている。そして、自分は死んだら天国に召されるということも本当に信じていたようである。だから、死を目の前にして自分の症状を客観的に見つめることが出来たのではないかと思う。
 エッセイのタイトルは「ガンに生かされて」ということだがこれはガンという病気になって死を目の前にしたことでそれが逆に生の有り難さを教えてくれたということでこのタイトルをつけたのだと思う。 
 彼はガンになって余命宣告を受けたことで逆に自分が神に生かされた尊い生命であったこと、そして自分には自分を愛してくれ、支えてくれる素晴らしい家族がいたことに気づき、魂は永遠の生命を悟り、救われていたと思う。

 そして、飯島夏樹さんに劣らず、本当に素晴らしいのは奥さんの寛子さんである。彼女は幾分ナーヴァスで内向的なご主人と対照的で小さな事にこだわらない、あっけらかんとした性格で、本当に最後までご主人の事を支え、力になり、そして愛したのである。
 「ガンに生かされて」の付記の寛子さんの文章にはこのように記されている。
「26日の夜27日の夜、夜中に何回も起こされた。夏樹は、過敏ですぐに排泄をしたがる。何度も下のお手伝いをしていて、とても嬉しかった。こんなことをしたくてもできない状況の人もいる中、そういう時間が与えられた。排泄の後、いつも疲れ、腰をマッサージしてくれとか言われる。いつも身体をさすっていてうれしかった。」
 以上は夏樹さんが今年2月28日、38歳の若さで亡くなる直前の2日間のことを書いたものである。私はこの文章を読んで涙が出そうになった。「ああ、これが夫婦だ。夫婦の愛だ。」としみじみと感じた次第である。

 飯島夏樹さんは肉体はガンにむしばまれて滅んだが、魂は救われ、天国で家族を見守りながら今頃は安らかに好きな執筆活動そしてウインドサーフィンを楽しんでいると思う。

 堀 浩二
by koujihori | 2005-04-25 22:49 | 信仰 | Trackback | Comments(0)
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